四事供養

十一月は秋晴れが続き絶好のお洗濯日和です。
すっかり押し入れに仕舞ったままになっていた衣類や寝具を天日にあてると、
ジメジメとした湿気がカラッととれて、コロナ禍に沈んだ気持ちもスッキリ入れ替わる気がします。
真っ青な空に、真っ白なシーツ、赤や黄色の枕、グレーの毛布といった洗濯物が並ぶ様子は、
さながら、青黄赤白黒の仏国旗のようにも思えます。

これから冬を迎え、日をおうごとに肌寒くなってゆくこの季節。
決して十分といえるものではありませんが、今年の夏に豪雨災害に被災された方々へ
の支援物資として、洗濯し天日干しをした寝具を届けさせて頂きました。
コロナ禍に加え経済状況も満足に回復していないであろう被災地の方々が、
せめて寒い思いをされない事を願います。

仏教の古くからの表現に「四事供養」という言葉があります。
「飲食、衣服、臥具、湯薬」の四つが経典によくみられるのですが、
つまり、食べるもの、着るもの、寝具、お薬のことです
。特別に珍しい宝石や高価な財宝のお供えものではなく、先ずは衣食住に
足るものが大切な供養であるとされました。
「失って本当に困るものは生活に直結するものだ」という被災地の声を耳にすると
身につまされる思いです。当たり前のように身の回りにあると思っていたものが、
どれほど私たちの生活を豊かに支えてくれていたのか。

且つて祖父や祖母の代からお寺の行持や生活を支えてくれていたお布団。
お寺で捨てずに大切に保管していたお布団がまた誰かを温める役にたったこと。
使って頂けたことを嬉しく心地よく思いました。

COVID19 に有効な新薬やワクチンの開発が急がれる中、各国の医療現場はその確保に
まさに争奪戦ともいえる様相を呈しております。
しかしながら、いくら良い薬でもその薬が争い事の原因となってしまわぬようにせねばならないと
いうことに私たちは心をとめおかなければならないでしょう。
実には「貪り・瞋り・痴さ」の三毒こそが仏教の煩いであるからです。

大切な事は、やはりこれまで通り、一人一人が日々の生活の中に手洗いうがいをこころがけ、
規則正しく健康的で丁寧な暮らしを心がけることが何よりの予防薬であり良薬であると信じます。

この良薬をお互いに施し合っているのだという心持ちで、
今暫くは続くであろう厄災を皆共に乗り切りましょう。

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