先祖供養を営む心

 私達はどうしてご先祖の供養をするのでしょうか。
それは人間だけが唯一恩をしている生き物だからであります。
私に一番近いご先祖は両親。そして祖父母であります。
たった十代遡るだけで、なんとご先祖様が1024人いらっしゃいます。

 お釈迦様の御教えは、縁の教えです。御先祖と私はつながっているはずです。
縁によって固く結ばれているはずです。そのご縁を持って生まれてきたわけであります。
 曹洞宗の宗祖道元禅師様は「生と死は別ではなく、一つのつながりである。」と「生死(しょうじ)」とを示し頂いております。生きる死ぬと書きます。お経の中では「生死の中に仏あれば生死なし」
一つのつながりである私たちは このご先祖のご供養をどう受け止めたらよろしいのでしょうか。
 書家であり詩人である仏教を学ばれた相田みつをという方が、こんな言葉を残されています。

「葉を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根は見えねえんだなぁ」
「葉を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根は見えねえんだなぁ」

 葉は子供たちで、枝は親、幹は祖父母であり、根はご先祖であります。見えない根に水や養分が一切届かなければ、樹木そのものが枯れてしまうことになるでしょう。
 ではなぜ数年ごとにご法事というものをするのでしょうか。
ご法事をする理由は二つあると思います。一つはもちろん感謝の心。
そしてもう一つは報告会であります。故人と縁の深い者同士が集まり、
清らかなお香を焚き、あなたの孫がこんなに大きくなりましたよ。
私も仕事大変ですが、何とかみんなで頑張っていますと。ご法事はまさに感謝と報告会です。
ご先祖のご先祖供養により、感謝と報告会という気持ちでお参りされるといいと思います。

 昨今は新型コロナウイルス拡大防止のため、葬儀やご法事にも出席ができない状態さえある大変な時期ですが、身近な人のご供養に行くこともできないのは本当に辛いことであります。
しかし心を形に表す行動は出来ます。お花などのお供え物を送ったり、ご供養の始まりの時間に合わせ、手を合わせ黙祷をする。その心は必ず亡き人に届くはずです。