菩提心について


さて、今回は菩提心についてのお話しです。
菩提心とは悟りを求める強いこころです。またこの心をおこすことを発心ともいいます。
道元禅師様は「ただ世間の生滅無常を観ずる心もまた菩提心と名づくと」といわれています。
それは、私たちが世の中の無常を感じたときや世の中の虚しさを観じたとき、
あるいは自分の弱さを自覚し、人生に生ききづらさ感じた時に、
自分にとって生き抜いていくすべや、確固たるこころの支柱となるもの、
そしてゆるぎないものを求めたいという心が強く湧きおこることなのです。
そこから、自分だけでなく、世間で悩んだりかなしんだりしている人々をみて、
放っておけない、一緒に寄り添ってあげたいな、一緒に歩んでいきたいなと願い、
仏さまのみ教えに沿った行いによって、自他共に安らぎを見出す心が菩提心になるということです。

  私の師匠はよく「悩みや悲しみのない人生はない、しかしそれがあなたの人生を豊かにする」
と申しておりました。人それぞれ悩みや苦しみは違うし、生き方も人それぞれ違います。
ただ、何もない人生は何もない、けれどもつらいことや悲しみを体験した
人生にはその人の深みが増し、自分自身をも成長させてくれるものです。
どんなことがあろうとも悩み苦しみながら、
生きぬかなければならないし、悩みはつきないお互いです。
では、人生を豊か生きていくためには、まず何が必要でしょうか。
それは、無常の世の中で、少しでも悩んだり苦しまなくてもよい生き方がしたいと、
こころから願い、仏様のみ教えをとおして苦しみの解決方法や生き方を学んで、
しっかりと日暮しをしていこうと自ら発心することが大切であり、それが悩み苦しみのない安らかな
境地、すなわち涅槃への道につながっていくのだと信じることなのです。

  今年も残すところあと二か月余り、未だコロナ禍にあり、
不安な生活を送る毎日の連続で、ストレスや不満ばかりがたまる日々はまだまだ続きますが、
少しでもいい生き方をこころがけて過ごしていきたいものです。