共に道を歩む
「我と大地有情と、同時に成道す」
この言葉は、お釈迦さまがお悟りを開かれたときの言葉です。大地有情とは、自然環境、
そして、この世の生きとし生ける全てのいのちのことです。お釈迦さまは、自分だけではなく、
全てのいのち、そしていのちと一体となっている自然環境と共に仏道を成就したのだ、
とお示しになられたのです。
お悟りを開かれたお釈迦さまは、各地で悩み苦しむ人たちのために、苦悩に寄り添い、
教えを説き、自らの行動で示されました。冒頭の言葉のとおり、自分だけの幸せを追求する
のではなく、他者を思いやる慈しみの姿、慈悲の教えを私達に示されたのです。
本年七月には、九州各地で豪雨災害が発生しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大と重なり、支援活動が思うように進まないという
困難が立ち塞がり、被災地では、今なお多くのボランティアさんが活動する姿が見られます。
先日、私が活動に参加した際に訪れたお宅には、
あの日から時が止まっているような光景が広がっていました。
建物の中には、泥が入りこみ、家財が散乱していました。しかし、
九州各地から駆けつけてくれた仲間と協力し、作業を精一杯お手伝いさせて頂きました。
その日の作業が終わり、帰ろうとする私達に、ご主人が声を掛けられました。
「これまでの日々、どうしたらいいのか考えるばかりで、何も手につきませんでした。
でも今日、皆さんの一生懸命な姿を見て、ここで生活を再建していくんだ、
また頑張ってみようという強い気持ちが湧いてきました。本当にありがとう。」
私自身、熊本地震の際、「どうしてこのようなことになるのか?」「なんで私が?」と
多くのことに悩み、立ち尽くしていました。そんな背中を支え、復興への後押しをしてくれたのが、
多くの方々の支援でした。物資を持って駆けつけてくれた友人の顔を見た時、
張り詰めていた私の心がふっとほぐされ、涙したことを今でも忘れることはできません。
私は、その時の感謝の気持ちを忘れず、今、ボランティア活動に参加させて頂いています。
私達は、決して一人で生きているのではありません。全てのいのちと支え合いながら、
助け合いながら生きているのです。お釈迦さまのお示しのとおり、私達は共に生きている
ということを忘れることなく、お互いが生かし合う、思いやりのある社会を築いてまいりましょう。