感応同心(かんのうどうしん)~離れていても心はつながる~
今年も暑い夏がやってきました。
夏休みに入ると、公園や児童館の周りで子供の姿を多く見かけるようになります。
日中は気温が上がり、外を歩くだけで汗だくになり、クーラーの効いた部屋の中が
恋しくなりますが、子供たちはそんなものもお構いなし、みんな元気に遊んでいます。
8月にはお盆がまいります。お盆というとお盆休みや、長い夏休みをイメージされる方も
多いのですが、仏教ではご先祖様のご遺徳に感謝し、ご供養をする大切な行事となっています。
お盆は、東日本や大都市部を中心に七月に行う「新盆」(しんぼん)と、西日本で多くみられる、
八月に行う「旧盆」とに分けられます。
わたくしのお寺の地域では、「旧盆」になりますと、毎年都市部から子供さんを
連れたご家族が帰省し、おじいちゃんおばあちゃんがお孫さんと一緒に
ご先祖供養に参加されたり、お墓参りに行かれたりという姿を見かけます。
仏様に手を合わせ、ご先祖様に感謝の気持ちを伝えている子供たちを見るとほほえましくなります。
昨年はコロナ禍ということもあり、楽しみにされていた故郷への帰省を断念され、
ご自宅からふるさとのお仏壇やお墓に手を合わせられた方々も多いことと思います。
ある檀家さまから
「和尚さん、お盆参りをしている読経中の写真を撮ってもいいかい?」
と聞かれ、私が読経している姿を写真におさめられていました。
「どうしたのですか」とお聞きしたところ、子供たちが都市部におられ、
毎年お盆には帰省していたのですが、今回は実家のお仏壇やお墓に参れないので、
せめてお盆供養の写真を送って、みんなで一緒にお参りをしたいと言われていました。
「普段であれば新幹線に乗って一~二時間の距離。日帰りできるほどの近い距離なのに
大切な方とすぐに会えない、電話では顔が見えないので、直接会ってお互いの無事を確認し、
喜び合いたい。子どもや孫がおいしいと言ってくれる手料理をご馳走し、
楽しくにぎやかなお盆を過ごしたい」
今まではよく見かけるお盆の光景ですが、
「当たり前のことが当たり前にできない。それゆえに写真を送って、
いつものお盆のように実家のお仏壇に手を合わせ、みんなの無事をご先祖様に報告したい。
距離は離れていても、せめて気持ちだけはつながっていたい」と言うのであります。
お互いを思いやることができれば、距離が離れていようとも心は強くつながっています。
次に会える時までお互いに元気で。
相手のことを気遣う優しさと真心をご先祖様にお伝えできれば素晴らしいご供養になります。
今年のお盆も、大切な方に会うことができない、そのような方も多いかもしれません。
ご先祖様に感謝し、大切な方の健康を願い、無事に再会できるご縁をいただく、
帰ることはできずとも、ふるさとのお仏壇を思い浮かべ、そっと手を合わせてみませんか。
大切な方の気持ち、そして心はあなたのすぐ近くにあるはずです。