いただきますの心

 

9月は秋分の日を「お中日」としたお彼岸の一週間がやってまいります。
ご先祖様にお参りを、という方も多いのではないでしょうか?

さて、日本には推進、啓発を目的とした交通安全週間や動物愛護週間、
人権週間といった様々な一週間がございます。「暑さ寒さも彼岸まで」と申しますが
一年の中で過ごしよいこの時節、平安時代より続くお彼岸を修行週間と捉え、
ご自信を磨いてみるのはいかがでしょうか?
ご提案します修行は決して難しいことではなく、
「日々の食事を心していただく」ということです。

かつて、永六輔さんのラジオ番組の中で「びっくりする手紙です」と紹介された内容は
「給食の時間に、うちの子には『いただきます』と言わせないでほしい。
給食費をちゃんと払っているんだから、言わなくていいではないか」
というものでした。番組には多くの反響があり、多数はその内容に否定的でありましたが、
少数ながら賛同する意見もあったというから驚きです。

永六輔さんは後に新聞の取材にて、
「お金を払っているから、いただきますと言わせないで」というのは、最近の話です。
命でなく、お金に手を合わせてしまう。「いただきます」という言葉は、
自然の世界と人間のお付き合いの問題です。
「あなたの命を私の命にさせていただきます」の「いただきます」。
食べ物を大事にできているかどうか。と話されました。

お寺では、食事の前に「五観の偈」という五つの心得をお唱えいたします。
要約いたしますと、

一つ目は感謝の心
この食事にはどれだけの命の関わりがあったのか、人々のご苦労があったのか、思いを巡らす。
二つ目は悔い改める心
この食事をいただくだけの行いが、出来たかどうかを振り返ってみる。
三つ目はむさぼらない心
人は食事の際には執着にとらわれやすく、決して煩悩を増幅させないように気をつける。
四つ目は良薬としての食事
いただくのはこの心身を保つ量で十分であり、健康を損ねるようなことがないようにする。
五つ目は仏道のための食事
食事とは様々な命を私の命にかえることであるが、その身で何を成すかが大切であり、
すべての生命にとって善い行いとなるよう最大限に努力する。

この五つの心得をお唱えし、食事をいたしますと、おのずと大自然への感謝が生まれてまいります。
これがお寺での「いただきます」。
お彼岸に際し、皆様も日々の「いただきます」をもう一度考えてみてはいかがでしょうか?