テレホン法話(11月前半)

皆さん、「SDGs」という言葉をご存じでしょうか。
Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を
とったもので最近の経済や環境問題におけるキーワードとなっています。
これは人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに
達成すべき目標であり、17の具体的な目標とそれを達成するために
必要な169のターゲットで構成されています。
例を挙げますと、1.貧困をなくそう、や10.人や国の不平等をなくそう、
13.気候変動に具体的な対策を、など人権や地球環境
など幅広い分野にわたっています。

この目標の決定には人間が様々な欲求を満たすために経済を拡大し、
地球上の資源を消費し続けてきた結果、国や地域による格差や
地球規模の気候変動の問題が生じたという背景があります。
例えば私たちが着る衣服について、季節や気候に応じて数着を用意し、
ほつれたら縫い直して着続ければそれほど多くは必要ないはずですが、
現代では安価で大量に作られた服を短い周期で着回し続けていく
という形が一般的となっています。それは、大量に生産するために
綿や化学繊維の原料となる石油など多くの資源を消費し、その商品を
低賃金で働く労働者が生産し、大量販売の裏で多くの売れ残り商品が
廃棄される、という状況を生み出しています。
これは、もっとたくさんの服を着たい、もっと商品を
売ってたくさん儲けたい、という欲求を追求した結果ではないでしょうか。

もちろん湧き上がる欲求のすべてが否定されるべきものではありませんし、
その欲求こそが私たちの文明を進化させてきたことはまぎれもない事実です。
ただ、現代においてそれがいささか暴走しすぎたのではないか、
その欲求を適切にコントロールしていくべきではないか、ということです。

我われ曹洞宗も宗門をあげてこの「SDGs」の目標達成に向けての取り組み
を推進することになっています。
曹洞宗の宗旨、さらに大きくいえばお釈迦様の教えを信仰する
我々仏教徒がこの目標を意識し、その実践に取り組むことには
大きな意義があります。
仏教の教えに克服すべき根本的な煩悩として貪、瞋、痴の三毒というものがあり、
その一つが貪、貪りの心です。人間の内から湧き出てくる限りない貪りの心、
あれが欲しい、あれが食べたいなどなどに向き合い、それに振り回されることなく、
自分のいのちを生きていく術が仏教の教えです。

この「SDGs」という目標を目にした時、自分の内に存在する欲求、
貪りの心にしっかり目を向け、それに振り回されてはいないか、
静かに考える時間を持ち、その上で目標を達成するために
自分にできる行動を考え、実践してみてください。