「やすらぎの道」

曹洞宗大本山永平寺をお開きになられた道元禅師様は、このようなお言葉をお示しです。
「仏道は人人の脚跟下なり」。
これは、私達の足元に仏様の道がありますよ。という意味です。
仏様の道とは、心にやすらぎをもたらす道のこと。
やすらぎとは、そのように身近にあるものですよ。とお説きくださっています。
そのため曹洞宗の修行では、この教えのもと日々の生活を一生懸命に務めます。
食事の時は食事。掃除の時は掃除。特に坐禅がそうです。
坐禅とは、姿勢を正して静かに坐り続けるもの。
坐禅中は、考え事をやめて坐ることに集中しないといけません。
即ち修行は、坐禅のように一つに徹する生き方を求められます。
真っ直ぐな心で毎日を丁寧に過ごすこと。
それが仏様の道を歩むために必要だからです。
しかし私達は、日々の生活を疎かにしてしまいがちです。
身勝手に物事を見ては、何か足りない。周りと比較しては、もっとあれが欲しいと。
現状に満足できず、自分の思い描く理想と現実に悩み苦しんでしまう。
その時、純粋に生きる喜びを忘れてしまい、日常に不満を抱いてしまうのです。

例えば、風邪を引いたとき。以前の健康な生活に感謝を抱き回復を願います。
ですが、治ってしばらくするとその感謝の想いを忘れてしまはないでしょうか。
再度、今の生活に満足できず。次の願望があれこれと沸き立つ。
そうなるといつまでたっても心は落ち着きません。

そこで道元禅師様のお言葉「仏道は人人の脚跟下なり」。
普段の生活の中に幸せがあることを気付きましょう。
そうすれば、真のやすらぎを得ることが出来るとお示しなのです。
現実の生活を見つめて、一つ一つを丁寧に。
道を歩めるこの命に感謝を忘れず日々を過ごすこと。
その中で、過去や未来に想いを巡らさず今この時に命を燃やすことが大切でございます。
例え憧れを抱いていても、この瞬間を疎かにしては掴むことが出来ません。
余計な考えを挟まず、今やるべき事に徹していく。
身勝手な欲望から離れるほど、今現在を大切にする事に繋がります。もし心が傾きそうな時は、
坐禅で身と心を調えてみる。もしくは、深呼吸をして冷静になってみる。
そして、私は仏様の道に立っていると強く信じてみてください。
苦しい時もありますが、そうやってそうやって何事も一生懸命に打ち込めば、
その一瞬一瞬に命が輝きます。
その輝きが私達の心をやすらぎへと導いてくれます。

最後になりますが私も現実から眼を背けず、皆様と共に
この瞬間をしっかりと享受して仏様の道を歩んでいきたいと思います。