こころに 幸せのタネをまく

「こころに 幸せのタネをまくと 幸せの花が咲きます」

これは昨年、曹洞宗九州管区が作成したポスターの伝道句です。

このポスターには伝道句と共にイラストが描かれています。
坐禅をしている小学生、それを見守るお釈迦さま、
そして疫病退散のキャラクターとして定着したアマビエの吹き出しには
「ことばも行いも心がもとバイ!自分の心を見つめてみんね!」
と言葉を付け加えています。

この言葉もとは「因果応報」という仏教の言葉です。
「因果応報」を分かりやすくいうと、「まいたタネに応じた結果が現われる」ということです。

お釈迦さまはさらに詳しく
幸せのタネをまくと、幸せの花が咲きます。
苦しみのタネをまくと、苦しみの花が咲きます。
自分のまいたタネは、かならず、自分に現われます。
そのタネとは、あなたの行ないのことですよ。ということです。

では、どんな行ないが、幸せという運命を生み出すのでしょうか。
幸せのタネとはなんでしょう?

仏教では、私たちの行ないのことを「業」といいますが、その行ないは、
体と、口と、心の三つがあります。これらの行ないがタネとなって、
運命を生み出していると説かれています。

アマビエさまの吹き出しであった「自分の心を見つめてみんね!」とあるように、
仏教では心の行ないを一番に重く見ます。

心があらゆる行動の元になっているからです。イライラしているときは、
どうしても、口調も荒くなってしまい、気持ちが焦ると
日常生活で思わぬ失敗をしてしまうものです。
私たちのさまざまな行動の元が心にあることは、誰でも納得できることでしょう。
だからこそ、元となる心の姿を見つめることで、多くの気づきを得ることができます。

昨年、参禅会の方から茶話会の際に「同期との人間関係がうまくいかず悩んでいるんです。」
とご相談されたことがあります。

詳しくお話を聞くと
「自分たちはパイロットの訓練生です。同じ部屋の同期に訓練課程について
アドバイスをするのに聞く耳を持ってくれない、
逆に険悪なムードになってしまったんです。」と話してくださいました

横で聞いていたご友人が、心配そうに
「その同期は年上の方なんです。私たちはその人に対して『よかったね』
『すごいじゃん』って声をかけるんですが、こいつは同じ部屋なので
『なんでそんなことぐらいで満足してるんですか、
こうすればもっとよくできるでしょ』って感じでアドバイスしてるんですよ。
自分たちはもうちょっと距離をとってアドバイスすれば良いと言っているのですが」
と話して下さいました。

そこで私は

「そばにそばにいるからこそ、同期の方に「なんでそんなことで満足してるんだ」
という苛立ちや、こうすれば良くなるのにという思いの積み重ねが口調を強くし、
人間関係を悪くしている原因ですね。「他人を変える」ということは大変な作業です。
苦しみの元になることもあります。
仏教の教えでは「他人を変えるのではなく、自分を変えていくしかない」という教えがあますし、
「私が変われば世界が変わる」という言葉もあります。
同期の方を心配する思いは変えずに、友達が言うように少し距離をとり相手の立場に立って、
訓練課程のことで相談を受けた際には、自分のありのままの気持ちを、
素直に伝えてみてはどうでしょうか」

「そうですね、まずは自分を変えてみます」

と答えてくださいました。

翌月の参禅会で、「和尚さん、自分の言動を変えたら、人間関係良くなってきました~」
と笑顔でご報告いただきました。

私たちは日々の心と体と口の行いがタネとなって幸せ・不幸という花を生み出しています。

「こころに 幸せのタネをまくと 幸せの花が咲きます」この教えをもとに、
今ここをどう生きるかによって変えてゆくことができる、
変わることができるんだと、積極的に受け止める。

口や体の行いの元になる心の姿を見据えて、幸せの花を咲かせる毎日でありたい。
少なくとも不幸の花を咲かせないように生きたいものです。