「ひとつひとつを丁寧に」

11月も後半に入り、まもなく年末を迎えようとしております。
新年を気持ちよく迎えるために皆様日を追うごとに忙しくなってきているのではないでしょうか。

しかし忙しくなるとどうしても物の扱いが雑になってしまいがちです。
時間がないからと一度に沢山の荷物を運ぼうとし、無理して持ちあげたものの結局バランスを崩してしまい、
かえって片付けに時間がかかってしまう、そんな経験のある方も多いのではないでしょうか。

私も法事に出向く際、雪駄を靴箱から出し、急いでポンと投げ落とすと裏返しになってしまい、
それにイライラしてしまうことがあります。
初めからしゃがんで丁寧に雪駄を並べていればイライラする必要もないでしょう。
雑な扱いをしてしまったために雪駄も、そして心も整いません。

そんなとき、私は修行道場のことをいつも思い出すようにしております。
私たち僧侶の修行は着物の着方や立ち居振る舞い、合掌礼拝の角度やお経の読み方、
そして食事の仕方に至るまできっちりと形が決まっており、できるようになるまで先輩の僧侶の方から厳しく指導されます。
はじめは面倒で煩わしいと思いながら過ごしておりましたが、数ヶ月もすると慣れてきてそれが当たり前になってきます。
すると自身の焦りやせっかちな部分が消え、落ち着いた心で毎日を送ることができるようになっておりました。
さらには周りを見る余裕もでき、同じように慣れずに困っている方のお手伝いまでできるようになっていることに気づきました。

曹洞宗では「威儀即仏法、作法是宗旨」といい、自身の身なりや所作、作法はすべて仏様の御教えであり、
日常生活のひとつひとつを丁寧に行うことの大切さを説いております。
自分の身の回りのものを大切に丁寧に扱うと、自然と自分の気持ちも落ち着き、心が整ってきます。
自分の心が整うと、さらには周りにも気を配って困っている人が心を整える助けになれるかもしれません。

忙しい毎日の中でも焦りやせっかちな気持ちを捨てて、自分の身の回りひとつひとつを丁寧に扱い、心を整えて参りましょう。