『禅とSDGs』
近年、テレビや新聞などで取り上げられる機会が増えた「SDG’s」という言葉を、
皆様もお聞きになったことがお有りでしょう。
職場や学校などでも積極的に取り組んでいるところが沢山有り、
曹洞宗でもこれに取り組んでいます。
SDGsとは2015年に国連が定めた「持続可能な開発目標」であり、
その英語標記の頭文字をとって「SDGs」と呼んでいます。
地球規模で進む環境変化や、貧困や差別、戦争など、
世界が一致して解決にむけた取り組みを進める為の17の項目が定められています。
私たちの生活が将来にわたって、豊かに持続する為の目標です。
その中には、『禅』の教えにも通じる項目がいくつもあります。
今回、それらについて少しお話ししたいと思います。
修行と聞けば、坐禅や掃除や読経などをイメージなさると思いますが、
曹洞宗の開祖である道元禅師さまは、「日常生活のすべてが修行である」
と教えられています。食事を作る事、そして食べる事、入浴やお手洗いの使い方など、
すべてを修行と考えるのです。
例えば、洗面の仕方にも細かな作法が決められていて、
一杯の桶の水でうがい・歯磨き・洗面を済ませます。
また、髪を剃るのも桶一杯の水で済ませるようにします。
このように、出来るだけ水を無駄にしないという考え方は、
「水は命の源であり、多くの生き物を支えている」
という道元禅師様の思いであり、SDGsの項目にも含まれているのです。
また、道元禅師様は《典座教訓》という、料理を作る上での心構えを示された
書物を執筆なさっておられます。材料や燃料を無駄にしないことはもちろんのこと、
調理器具の取り扱い方や、真心を込めて作ることなど、とても丁寧に説き示されています。
また、《赴粥飯法》という書物では、食べる者の作法や心構えについても示しておられます。
これらのことを、解かりやすく表したものとして《五観の偈》があります。
食事をいただく前にお唱えする五つの項目です。
その第一番目に、「一つには功の多少を計り彼の来処を量る」とあります。
これは、「この食事が私の前に届くまでに、どれほど多くの人の手間や苦労や
工夫があったのかに思いを巡らせ、感謝して頂戴します」という意味です。
現在の日本の食料事情を考えると、遠い外国から届いた物も沢山あります。
フェアトレードといった、適切な価格によって
調達された物かどうかを考えることも大切なことです。
つまりSDGsの考え方に相応しいものであるかに思いを巡らせなければなりません。
禅の教えに沿った生き方は、現代社会の課題解決にも繋がっているのです。
私たち自身が、日常の生活を振り返り、整えてゆくことが大切なのですね。