『捉え方ひとつで』
新年度、新生活が始まり、生活環境の変化があった方は、5月になり少しずつ慣れ始めてきた時期でしょうか。
環境や生活のリズムが変わると、慣れないことが多く、ストレスが溜まってしまいます。環境だけではなく、社会の仕組みが変わったり、様々な場面で機械化が進んだりと、今までとは違う変化が生じた時も同じです。ストレスが溜まると心の余裕がなくなり、どうしてもイライラしてしまいます。受け取り手の心境によっては、親切心から行う言動も、逆効果になってしまうことさえあるのです。
仏さまは、改めるべきものとして、貪り、怒り、愚かさを、三つの毒と書いて三毒としてお説きになられています。これらは煩悩の源であり、私たちの心の中にあると、自分だけでなく周りの人たちも、気持ち良く毎日を過ごすことが出来ません。これらの煩悩、三毒は連鎖していってしまうのです。
その煩悩の源をいかに減らしていくか、なくすことが出来るか。それは自分がいかに三毒に支配されているのか、ということに気づくことがまず第一歩です。
私が大本山永平寺で修行をさせて頂いていた頃の話です。坐禅や朝昼晩の法要、お寺の掃除などの厳しい修行の毎日で心の余裕が全くありませんでした。食事も限られており、空腹を何とか満たそうとする貪り、修行仲間であるのにお互いミスをしてしまうと怒りに身を任せて口論になったり、納得がいかないと不満や愚痴をこぼしてしまうこともありました。
しかし,次第に修行にも慣れ、仏さまの教えに真摯に向き合い、お互いに切磋琢磨した修行仲間の存在から、謙虚に自己をみつめることが出来るようになりました。食事の際はゆっくり噛んで食事に向き合い、食べ物や調理してくれた方への感謝の気持ちが湧いてきました。何かミスがあってもお互いに補い合い、協力することが出来ました。不満や愚痴をこぼすのではなく、どうやったらその問題が解決するのかを話し合うことが出来ました。
今でも、修行中に学んだことと研鑽をし合った仲間は、大切に心の中にとどめています。