「大変さの中の大切さ」

数年前、あるお檀家さんとお話をしていますと、

家のお墓を移動したいという相談をされました。

移動したい理由を伺ってみると、

お墓の掃除が大変に感じてきたからだそうでした。

その方の家のお墓は、昔から家の裏の山の中にあり、

お墓までの道のりがけわしい上に

一年を通して草や落ち葉、枯れ枝なども多く

お墓掃除にはいつもまる一日ほどかかるそうです。

 

若いころはたいりょくが続いたけれど

七十代に差し掛かり、この掃除を

あと何年続けれられるだろうかと不安に思うように

なったのだそうです。

 

また、ご長男さんからは、自分の代に変わったら

毎回一日かかるような掃除はできないから

早いうちにお墓を移動するか、墓じまいをしてほしい、

ということを言われたそうです。

 

先祖から代々その場所にあるお墓を移動することは

忍びなく感じるけれども、自分の体力や、

長男から言われたことも考えると、

お墓をどのような形かで、

手間のかからないようにしなければならないとおもっています、

とそのお檀家さんはおっしゃいました。

 

ただ、その複雑な気持ちの中でも、嬉しかったという出来事も話して下さいました。

それはお墓掃除を、よく手伝ってくれる次男さんに言われた言葉でした。

いつも大変な墓掃除を手伝ってもらって悪いなということを

次男さんに言うとこのような言葉が帰ってきたそうです。

「掃除はきついけど、こうやって一緒に墓掃除したりする時間が大事なんだと思うよ」

そのように次男さんは言われたそうです。

それがとても嬉しかったと、そのお檀家さんはおっしゃっていました。

その相談をされてから数年が経ちましたが、まだお墓を移動するという連絡は来ておりません。

 

九月に入り まもなく秋のお彼岸がやってまいります。

みなさまの、ご先祖さまへのお参りが良きものになりますようにお祈り申上げます。