精霊流し

熊本市南区を流れる加勢川では、毎年八月十五日の夜に川尻精霊流しが行われています。その起源は、加勢川の近くにある大慈寺の行事にあるといわれ、四百年以上の歴史があります。

大慈寺は、寒巌義尹禅師が一二七八年に開かれた肥後の名刹です。

川尻精霊流しは、新型コロナの流行によりしばしの中断期間がありましたが、多くの皆さんの尽力により昨年本格的に再開しました。日が沈む頃、川岸には多くの方が集まり、私たちが読経します。その中をゆっくりと流れるロウソクの灯りに包まれた精霊船や灯篭の光景は、ご先祖さまをお送りする厳かな気持ちにさせられます。川岸に集まられた方々は、静かに手を合わせ、それぞれに思いを込めてお見送りされています。

梅花流詠讃歌 盂蘭盆会御和讃の三番には、

水面(みなも)に映(は)ゆる灯明(ともしび)に

永(なが)き安寧(やすらぎ) 願いこめ

精霊(しょうれい)送る盂蘭盆会(うらぼんえ)

尊(とうと)き法要(まつり)に仏道(みち)を知る

とあります。まさに精霊流しの場面を表しているようです。

本年も多くの方が故人のお名前を書いた精霊船や灯篭を流されました。私も、亡くなった祖母の名前を灯篭に書いて参加しました。川面を流れていく多くの灯りを眺めつつ、祖母の生前の姿を思い浮かべておりました。庭で花を育てることが好きだった祖母。その姿を参考に私も花に興味を持ち育てています。家庭菜園で野菜を育て、孫たちに料理をふるまってくれた祖母。私は野菜を育ててはいませんが、野菜料理は得意です。などなど、祖母に近況も報告できました。そして、これからも私たちのことを見守っていてくださいと、静かに手を合わせお見送りしました。

皆さんはお盆をどのように過ごされましたか。お盆の行事として、ご家庭で迎え火、送り火をされた方もいらっしゃると思います。たくさんの御馳走を準備してお迎えされた方もいらっしゃると思います。お盆とは、あらためて生前のご縁に感謝し、私たちの命の尊さを学ばせていただく大切な時間ではないかと思います。