三心

曹洞宗の開祖 道元禅師が書かれた「典座教訓」についてお話いたします。典座とは禅寺に
おいて食事をつかさどる役職であり 一般社会的では料理長 シェフに当たる仕事です。
典座教訓は炊事と言う日常的営みの中に仏道修行を示す、すなわち修行僧の為に心を込め
て食事を作る労働は尊い行いであり、真の仏道修行に他ならないと説いておられます。
典座教訓の終わりには喜心・老心・大心の三つの心を持って料理をつくる心構えを示さ
れています。
喜心とは、喜びの心です。
今、目の前にある命、食材の恵みに対しての喜びや感謝。料理が出来る喜びです。
老心とは、孫や子供を愛するような慈しみの心。
母が我が子を思うように、無償の愛情をもって調理すること。
料理を召しあがる人のことを思う「おもてなし」の心です。
大心とは、山の如く高く海の如く広い寛大な心です。
人に対しても、食材の価値や値段に対しても偏見や固定観念を捨て、召し
上げる人のことを思うことです。
親切丁寧な心掛けと作法です。
つまり、喜心=つくる喜び
老心=もてなす喜び
大心=相手の立場を思う喜び、親切心です。
現代の日本人は食べ物に対する感謝の心が薄くなり、生ゴミや残飯があふれる時代となっ
てしまいました。そして家庭では料理を作らず、冷凍食品やインスタント食品が増えてきま
した。これも止むを得ないことではありますが、調理というものは作る側も、食べる側も感
謝と慈悲の心を忘れてはなりません。道元禅師が教えられた三つの心、喜心·老心·大心を
もって調理にあたることを念じます。また食事をいただく側も同様の心を忘れてはなりません。
喜心、老心、大心をもってすべてのものに感謝し、手料理を美味しく頂く。食につ
う一度向き合って見てはいかがでしょうか。