仏とはどのようなものですか?

福井県にあります大本山永平寺の大講堂には、「麻三斤(まさんぎん)」という書がかけてあります。この言葉は、中国で成立した禅問答に出てくる言葉です。

ある時、一人の僧が洞山という和尚さんに質問します。「仏とはどのようなものですか?」この問いに答えた洞山さんの一言がこの「麻三斤」という言葉なんです。

このままだと全く理解ができませんね。細かく意味を見ていきましょう。麻(ま)というのは、植物の麻(あさ)のことです。ここでは、麻の繊維から織られた麻布を意味しています。斤とは、重さの単位です。ですから、直訳しますと、麻布三斤分ということになります。では、麻布三斤分で何が作られるかと言いますと、私たちお坊さんが身につけている御袈裟一着分の量になります。

つまり、洞山さんは仏とはという問いに対し、御袈裟一着分の麻布だ、と答えていることになります。では、この答えは何を示しているのでしょうか。洞山さんは、「仏とは、おまえ自身だ」とおっしゃっているのではないかと解釈されています。仏とは、外に存在するものではなく、私たち自身の中にあるとおっしゃっているのです。

皆さんもちょっと想像してみましょう。ガラスのコップを持ち、外の水たまりにある泥水をすくってみて下さい。泥水には、色々なものがまじりあっていますよね。でも、そのコップをしばらく置いてみるとどうなるでしょうか。きれいな水の部分とごみの部分に分かれていませんか。私たちの心の中も同じなんです。普段は色々な考え、欲が渦巻いていて、混沌としています。それが様々な悩みの発生源となっているのです。

そこで、姿勢を調え、呼吸を調え、心を調え、ちょっと一息、坐禅に親しんでみませんか。いつでも、どこでも、だれでも、三つを調え坐ることで、私たちの中にある仏、つまり分け隔てない慈しみの心に気づくことができるのではないでしょうか。

皆さまも普段の生活の中で坐禅に親しみ、心を安らかに過ごしましょう。私を優先させる行いより、自らの行いを仏の行い、分け隔てない慈しみの行いとして、一緒に手を携えて、相手を思いやり支え合いながら、共に歩んでまいりましょう。