彼岸〜自然との調和〜
九月の後半には秋のお彼岸がございます。
お彼岸は一年に二回ある仏教行事で、三月の春分の日、そして九月の秋分の日を挟んで、それぞれ七日間を「お彼岸」とお呼び致します。
彼岸とは、彼の岸と書きますが、こちらの岸に対して向こう側の岸という意味で、迷いや苦しみの多いこちらの世界から離れた、やすらぎのあるあちらの世界を表す仏教の言葉です。
お彼岸のこの一週間には多くのお寺でご法要が行われ、また僧侶をご家庭に招いてのお参りがおこなわれます。そしてお墓や納骨堂など、ご先祖さまがお祀りされた場所にお参りをするのが古くからの日本の文化になっております。
春も秋もこのお彼岸の頃になると気温がおちつきはじめます。寒さや暑さやが和らいで、身体が楽になり、少しホッとするようなやすらぎを感じる時期がこのお彼岸の時期です。
春分と秋分の日には昼と夜の時間がおおむね等しくなり、そういった面でも、また気温の面でも、とてもバランスがとれた時期なのではないかなと感じます。
私がご縁を頂いているお寺では、春と秋のお彼岸にお檀家さんの各お家にお参りに伺っているのですが、そのお参りの時によく話題にあがるのが、彼岸花の開花の話です。秋のお彼岸を象徴する彼岸花ですが、別名を曼殊沙華と申します。
仏教をお開きになったお釈迦さまが人々の前で教えを説かれたときに、そのみ教えの尊さに感動した天が沢山の花を雨のようにふらせ、その時に降った花の一つが先ほど申した曼殊沙華であるとお経の中にしるされております。
そのようなありがたい名前を頂いている彼岸花はこの秋のお彼岸の頃になると田んぼのあぜ道などに真っ赤な花を咲かせます。
この秋のお彼岸を待っていたかのように咲きだす彼岸花を見たり、暑さ寒さも彼岸までという言葉通りに落ち着いてくる気温を感じると、この自然と調和したお彼岸という行事を見いだして大切にしてきた昔の方々の感性は本当に凄いと感じます。
この自然という事を考えるとき、曹洞宗の大本山 永平寺の七十八代目の住職をお勤めになられた宮崎奕保禅師のお言葉が思い出されます。
「この大自然は誰に褒められるという事も思わず、自分がしたことへの報酬を考えることもない、時が来たらちゃんと花が咲き そして黙ってすべきことをしてさってゆく そういうものが実行であり教えであり真理である」とお示しになられました。
自然に敬意を払い自然を観察しその自然を手本にして調和し生きる事は地球に生きる人間という生物としてとても大切な事だと思います。私自身、現代社会に生き、自然に即した生き方ができているとは思いませんが、このお彼岸という行事を通して、自然と調和し生きて来た祖先の智慧をあらためて知り、考えたいと思います。
皆様方におかれましては良きお彼岸を迎え、健やかにお過ごしになられますようお祈り申し上げます。

