師走

今年もあっという間に十二月となり、年の瀬が迫り残りわずかとなってまいりました。皆さんはどのように過ごされるでしょうか。家族全員で旅行へ出かけたり、神社仏閣へ参拝または出かけずにテレビやネット配信を見たりとそれぞれのご家庭で様々な過ごし方があるかと思います。皆さんは年末と言えば何を思い浮かべるでしょうか。「大掃除」や「除夜の鐘」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
仏教では、掃除は修行の一つとして捉えられてきました。お釈迦さまの十大弟子の一人に周梨槃特(しゅりはんどく)という弟子がいました。その方は聡明な兄に誘われ仏弟子となるのですが弟子の中でも特に記憶力が悪く、勉強も苦手で更には自らの名前さえも忘れてしまう有様だったようです。そんな愚鈍な性質をもつ自らを恥じ遂には修行を辞めてしまおうかとお釈迦さまに相談します。その時、お釈迦さまは「自分を愚かだと知っている者は愚かではない。賢いと思い上がり、自分の愚かさを知らない者が本当の愚か者である。」と説き思いとどまらせます。そしてお釈迦さまは、周梨槃特に一本の箒(ほうき)を与え、「塵を払う、垢を除く」と唱えさせて掃除することを教えました。それ以降、何十年とこの教えを守った周梨槃特は周りからも一目置かれる存在となり、やがて悟りを開くことになったのです。それは、「塵」や「垢」というのは単に部屋などに落ちている「塵」や「垢」ではなく、自らの心の中にある「塵」や「垢」つまり仏教において克服すべきものとされる「煩悩」、「三毒(さんどく)」と呼ばれる「貪瞋痴(とんじんち)」であることに気づいたのです。一つ目の「貪(とん)」とはむさぼり、欲望の心、二つ目の「瞋(じん)」とは腹を立てるなどの怒りの心、三つ目の「痴(ち)」とは愚かで自分本位でわがままな心のことを言います。周梨槃特はこれらを自覚し捨て去ることで、心の安らぎを手に入れることができたのです。
皆さんもこれから新年を迎えるにあたって、大掃除をされると思います。周梨槃特のように「塵を払う、垢を除く」を心がけてご先祖様のいらっしゃるお仏壇や家中のあらゆるところをきれいにしていくことによって、この一年で溜まった自らの内面の「塵」や「垢」も落ち、スッキリとした心で新年を迎えることができるのではないでしょうか。