『今の自分を、そのまま受けとめる』
1月1日から3日まで、修正会という、お正月の特別な祈祷を行います。1年を、日本の世界中の方々が幸せに過ごせるようにと願いを込めて、一心にお祈りします。
新しい年を迎えますと、私たちは自然と「今年はこうありたい」「今年はこれこれをやろう」と、目標を立てる方も多いことと思います。その心や願いはとても尊いものですが、知らず知らずのうちに、自分をせかす心に変わってはいないでしょうか。
日々の暮らしの中で、「こうでなければならない」「もっと良くしたい」「まだ足りない」「もっとできるはずだ」そうした思いに押されながら、私たちは自分自身に休む間も与えず、過ごしているように思います。
だからこそ、新しい年の始まりに、いったん立ち止まり、今の自分を、そのまま受けとめることが大切ではないでしょうか。できていない自分、思い通りにならない自分、迷いや不安を抱えた自分。そうした姿を無理に変えようとせず、「これが今の私なのだ」と、そっと認め、受けとめるところから、仏道は始まります。「受けとめる」と申しますと、「あきらめること」や「努力をやめること」のように聞こえるかもしれません。しかし、仏さまの教えにおける「受けとめる」とは、投げ出すことではありません。今の自分の姿を、そのまま見つめること。良いところも、足りないところも、ひっくるめて確かめることです。たとえば、暗い道を歩くとき、足元が分からなければ不安になります。しかし、足元が見えれば、歩幅は小さくても、安心して一歩を出すことができます。受けとめるとは、立ち止まることではなく、安心して歩き出すための、足場を整えることなのです。
道元禅師は、仏道とは特別な境地を求めることではなく、今ここにある身体と心を明らかにし、生きることだと示されました。坐禅もまた、何かを得るために坐るのではありません。思いを払いのけるのでも、理想の自分になるためでもなく、ただ今の自分を、そのまま坐らせるのが坐禅です。
朝起きて顔を洗う、食事をいただく、人に挨拶をする、スマホを見ることも。こうした何気ない日常のひとつひとつを、「これでよい」「ここからでよい」と受けとめ、丁寧に行っていく。そこにこそ、仏道の歩みがあります。
今年一年を、思い通りに整えようとするのではなく、今日一日、今の自分を偽らず、大切に生きる。その積み重ねが、気づけば私たちを仏さまの道の中へと導き、自然と穏やかな一年が開けてくることと思います。

