節に立ち返る

すべてのものは無常である。そのようにお釈迦様はおっしゃいました。

今目の前にあるものは必ず変化し、いずれなくなってしまう。いつかなくなるものなら、適当に扱っても構わない、ではいけません。常ではないからこそ、今あるものを長く大切にできるよう、絶えず努力していかなければならないと私は受け止めております。

新年度が始まり一月がたちました。今年度はこれを頑張ろう。そう決意を新たにしたものの、いつの間にかやめてしまった、それどころかやめてしまったことすら覚えていない。皆さんも身に覚えはありませんか?

私も週3回を目標にした筋トレ、今では月に2,3回すればいい方です。反省ですね。

私が副住職を務めているお寺の裏山には竹林がひろがっております。3月の終わりから4月の中旬にかけて筍が芽を出します。筍掘りは毎年の私の役目です。初日は5,6本だったのが、一週間ほどすると一日50本以上の筍が生えてくる。掘るのも大変ですが、もっと大変なのは掘った筍を山から降ろす作業です。1本2,3㎏の筍も50本になれば約150㎏。それを持てる分だけ籠に入れ、急な斜面を滑らないように何往復もする。春先でも汗びっしょりになり、ぐったりと疲れてしまいます。

食べる分だけとればいいと思うかもしれませんが、筍は芽を出すと最初は小さくても、数日ほったらかすとあっという間に数メートルの竹に成長します。成長した竹がどんどんと増え密集してしまうと、山に入るのも難しくなる。さらにはほかの植物にも日が当たらなくなり、成長が阻害されてしまいます。

竹はあまり深く根を張らないので他の植物が成長できないと、土砂崩れの危険性も高まります。これを竹害と言って、全国各地の放置竹林が社会問題にもなっております。安全で作業をしやすい山を保ち、竹もそのほかの植物も生き生きと成長できるように、日々手を入れ続けなければなりません。

毎日変化する竹林のように、私たち人間も毎日必ず変化していきます。毎日覚え、毎日忘れる、そうやって一生を過ごす生き物です。どんな善い行いも、繰り返し続けていかなければ、すぐに忘れてしまい、できなくなってしまいます。今一度新年度の決意を思い出し、共に続けて参りましょう。それがお釈迦様の御教えの実践でございます。