「人と人との繋がり」

世界中の様々なニュースを見る中で、周りの人が苦しみ困っている時に、
私は救いの手を差し伸べることが出来るだろうか?とふと思うことがあります。
それは私自身ある経験をしたからです。

宮城県の大学に進学した春のことです。今でも忘れられない出来事が起こりました。
それは東日本大震災です。被災直後は水、電気、ガスが使えず、物流が止まり、
食べ物、生活用品など今まで当たり前にあると思っていた物が
当たり前に存在する状況ではなくなりました。

皆がそのような状況にある時です。
地震も少しおさまり、食べ物を探し求め歩いている時に、
普段は話したことのなかった近所の方が、私に声をかけてくれました。
大丈夫?食べ物に困ってない?と県外から来て一人暮らしをしている私を気遣ってくれました。

慈悲心から相手を想い、自分と相手が共に幸せになることの出来る四つの実践として
「四摂法」というお釈迦さまの御教えがあります。
その中の一つに、相手の立場に立ち、
自分と相手との隔たりをもたない『同事』という御教えがあります。

被災後に声をかけてくれた方こそ『同事』の実践をしていたのです。
私の立場に立って、思いやりを持って接してくれた同事の心。
この出来事によって私はとても救われました。
当時はまだ大学生でしたが、知らず知らずのうちにお釈迦さまの御教えに触れていたのです。
お寺の息子として生まれ、なんとなく後を継ぐのだろうと思っていた私でしたが、
今思えば、仏道を歩んでいくのだという、より強い決意をもつきっかけになりました。

私たちは決して一人で生きているわけではありません。
誰もが繋がりの中で生活をし、その中で生かされている私がいるのです。
困っている時は、お互い支え合い、助け合うということを心に刻み、
今あるご縁を大切して毎日を過ごしています。